創業、昭和26年。 株式会社木は、オリジナルバッグの企画・製造に確かな技術でお応えします。

■木のこだわり「その1 素材選び」

木ではカバン作りに様々な素材を用います。デザイナーからの使用素材指定に応じて、様々な素材を調達しますが、一番難しいのは皮革です。
皮革は個体差があります。 2 つとして同じ条件のものがありません。例えば牛皮は 1 頭から 2 枚とれますが、年齢や品種などは判りません。価格は 10cm 四方の価格×総面積で購入しますが、様々なコンディションがあるにも関わらず、単位あたり価格は同一です。

皮革は生き物ですから呼吸しますし、伸縮もします。背中から腹部に向かう位置でも、胸部と腰部でも品質は異なります。
皮革を裁断する際コストを下げるためには、皮革の上に隙間なく型紙を展開すれば良いのですが、合理的な型紙配置を行うと、カバンの表部分に劣った部位が来てしまうこともあります。また 1 枚の皮革から、同一パーツだけをまとめて抜き取れば、効率的に使い切れる場合もありますが、皮目の縦横が混ざってしまう事や、染色のできによっては同じパーツで色が微妙に異なることもあります。

そのため高級カバンの制作に際しては、担当者が商社に出向いて 1 枚ずつ購入する皮革を検査し、カバンのパーツ抜き取りをイメージして、選別したものだけを購入し製品化しています。大型カバンなどを皮革で作る場合、 1 頭分以上の皮革を利用することもあります。同様の皮質の皮革をカバン 1 個分探し出すために、半日以上かかることもあります。

しかし一流品を生み出す作業で皮革を技術者の目で選び出すという行為は、必要不可欠なものなのです。

■木のこだわり「その2  型紙起こし 」

デザイナーがカバンデザインを作成するとき、大半は一番美しく見える位置からのラフスケッチやデザイン画作成と素材の大まかな指定で、正面図、側面図、上面図、下面図などが提供されることはほとんどありません。

更にそのカバンがいくつのパーツからなっているかを考えているデザイナーも、ほとんど存在しません。大手メーカーのバッグでも、ヨーロッパのブランドバッグでも、多くの場合実際に制作する際のパーツ分け(パーツの数や形を決める作業)は、カバンメーカーのエンジニアが行います。当然のことですが、パーツが多くなると、素材の断裁や縫製に手間がかかるため、相対的にコストが上昇し、結果的に消費者価格も上昇してしまいます。

一方コストを抑えるために、パーツ数を少なくすると、デザイナーがイメージしたシルエットの際限が難しくなったり、特定部分に力がかかりすぎてゆがみや耐久性の低下などが起こります。エンジニアは長年の経験を元に、縫製技術者と実際の縫製をイメージしながら型紙を切り出します。
型紙を切り出すエンジニアなら誰でも持っている丸秘ノートには、カバンの要所にある曲線を生み出すためのヒントや数字が、暗号表のようにたくさん書き込まれています。エンジニアは言います「隣近所で火事が発生したら、一番に持ち出すのはこのノートと、型紙」だと。カバン制作会社にとって、型紙は二番目に大切な財産なのです。

一番の財産は言うまでもなく、型紙を起こすエンジニア・難しい注文でも平気な顔で縫い上げる縫製技術者、・サイズを指定通りに裁断する技術者など、一流商品づくりを担う、当社社員です。

■木のこだわり「その3 縫製」

その昔カバンの縫製は手作業でした。現在はかなり分厚い帆布でも、化繊布であっても皮革であってもミシンで縫製します。しかしミシンは工業製品のため、同じように縫製できるかというと、実は微妙に異なるのです。

縫製技術者の癖もミシンには染みこむものですし(そんなことないと思われるでしょうが)温度や湿度、あるいは縫製する素材によっても調子は違ってきます。
さらにミシン針の太さ、使用する糸の太さや素材によっても仕上がりは変化します。もちろん素材や、素材の堅さによって針も交換しますし、糸も換えます。
ミシンの場合、上糸と下糸の引っ張り強度によっても縫い目の美しさが変化します。さらに縫い方も部位によっては異なります。ハンドルやベルト部分は強度を商品全て均一にするため、縫い幅、縫い目間隔、縫い順などを縫製コンピュータに記憶させ、全て同一条件で縫製します。
また、裏地や内ポケットであっても、縫い目の美しさが求められる部位作成にあっては、一個ずつ定規を当てて縫製したりします。工業用ミシンで一気に縫い上げれば 10 秒前後で縫い上がる部分であっても、当社では素材をきっちり揃え、場合によっては仮留めし、さらに定規をあてがうなど下準備に数分かけて縫い上げます。マスプロダクトという条件下では非効率です。

その上当社縫製エンジニアは自分でミシンのメンテナンスを行います。効率から考えるとトラブル発生時には、スペアミシンで縫製しその間にメーカーに修理させれば良いのですが、先にも述べたとおり、ミシンにも個性があり、個性が仕上げを決めてしまいます。そのため当社エンジニア(職人といった方が良いかも知れません)は、自分の担当ミシンを大切にします。調整や修理は全て自分で行います。
彼らは言います「ミシン縫製であっても、縫い目を見れば誰が縫ったかわかる」と。ミシンの調整や修理は、プロスポーツの選手が自分の使用する道具の手入れは他人任せにしないのと同じです。

このような考えは、非効率であり非生産的と受け取られるかも知れません。しかし当社では、非効率であるとしても、このような作業を大切にしています。
敢えて非効率の中に品質を求めるのが、木のあり方なのです。